基本はルーティンの仕事ですが、危険も多く、知力も体力も使い、なりより経験値が重要です。
牛は朝突然に死亡している事があります。
なるべく未然に防ぐため、早朝と深夜の見回りを交代で行っています。
各牛舎のエサの槽(飼槽)を周り、エサの残り具合のチェックや、残ったエサのならし、牛たちの様子の確認などをします。また天候や気温によって、カーテンの開け閉めや扉の開閉も行います。夏は扇風機のチェックも肝心です。牛舎の数が多い為、一回りするのに相当のエネルギーを消費します。
基本は朝と夕、2回エサやりを行ないます。子牛などの小さな牛舎は手やりで大きな牛舎はミキサー車で回ります。
ミキサー車では、各エサのそれぞれ決められた量をショベルですくい入れ計量し、混ぜ合わせていきます。適量を目測ですくいあげるのは難しく、時間をかけすぎてしまうと、エサが細かくなりすぎて粉状になってしまいます。またミキサー数台が順番に計量していくので、遅れると次のスタッフの仕事も遅れてしまいます。スピーディーに計量するには、長年のカンと繊細なテクニックが必要です。
ミキサー車で飼槽にエサを落としていくのも難易度の高い作業です。長い飼槽に決まった重量を均一になるように落とさなければなりません。これは飼槽との距離を保ちながら、一定のスピードで一定の量を落としていく作業なのですが、実際にやってみるとかなり至難の業です。さらに途中に水槽が有ったりすると、水槽にエサが入らない様にタイミングよく止める作業も加わるので、さらに難しくなるのですが、ベテランのドライバーは一発で素早くきれいに落としていきます。
各牛舎を回り、健康状態の悪い牛をチェックします。
症状が軽そうな場合は筋肉注射、症状が重い場合は静脈注射などを施します。
主に牛の臀部に打ちます。抗生物質、ビタミン剤など。
※抗生物質を注射すると2カ月間出荷できなくなります。肥育期に入ると注射を打つ事のないように管理していかないとなりません。
まずモクシをつかって牛を捕まえます。病気の牛は動きが鈍ていますがそれでも捕まえるのは一苦労します。うまく捕まえられずに走らせすぎると、体力を消耗しさらに重症化してしまうので注意します。通常2~3人で捕まえますが、1人で捕獲しなければならない時もあり、牛の動き方の癖や習性を把握しておかなければなりません。うまく捕まえてから、柱等に固定してから注射を施します。通常は首の静脈に注射します。中には動脈がはっきり浮き出ない個体もいるので、慣れないと難しいです。針は血管になるべく水平になるように刺していきます。うまく血管に入ると血が逆流してくるのでわかります。血管を外れると、ピストンの感触が硬くなり押しづらくなります。
※事前に必ず注射針と本体の煮沸殺菌が必要です。また血管に空気が入らない様に、針が折れないように注意が必要です。万が一体に残ってしまった場合は申告が必要です。
大きな牛は転倒すると自分では起き上がることができなくなってしまう場合があります。転倒したままだと数時間後にはガスがたまって死亡してしまいますので、早急に体を起こさなくてはなりません。牛の体重は重い上、暴れてつぶされる危険があるため通常は素早くスタッフを集め、数名で起こす処置をします。床の状態が良くない場合に起こりやすいですので、敷料の状態管理が大切です。
汚れた水槽を掃除したり、壊れた水槽の修理をします。(バルブが良く壊れます。放っておくと牛舎が洪水状態になります。)
育成時期までの小さな牛は育成ステージ毎に牛舎を移動させます。牛を一斉に家畜車にのせ移動させますが素直な牛と素直じゃない牛がいるので一苦労します。
牧場にやってきた牛は出荷までに3回体重をはかります。最初は導入時、2回目は育成終盤、3回目は出荷直前です。特に2回目はいっぺんに1牛舎(約150頭)の体重測定をするので大変です。スタッフ5人程で体重を測る係、記録する係、体重計に追い込む係、見張って誘導する係に分かれフォーメーションを組みます。測定が始まると、皆が阿吽の呼吸でそれぞれの動きをし、1頭1頭測定していきます。終わるころには相当エネルギーを消費しています。
新しい子牛が入ってくる前に牛舎をキレイに消毒します。子牛は免疫がないので、徹底的に隅から隅まで行います。
仔牛は地元を中心に毎月200頭を導入します。生まれて1週間前後の子牛を市場で競り落として、家畜車にのせて牧場に連れてきます。近年はホルスタインの全体数が減ってきており、頭数の確保が大変です。
買い付けた子牛たちを家畜車から降ろします。最初は怖がってなかなか素直に降りようとしません。なんとかおろしてから1頭毎に体重を測定し、哺育ロボット用の首輪をつけていきます。24頭ほどの群にして、哺育舎から離乳舎、育成舎、肥育舎へ、成長に合わせて移動させて育てます。メンバーを変えるとケンカしたりしてストレスがかかるので顔ぶれは肥育を終了し出荷日を迎えるまでほぼ同じままです。
仔牛は1日に飲ませなければならないミルクの量が決まっております。舎内には哺育ロボットが設置されており、仔牛がミルクを飲みに行く度、飲んだ量や飲む速度などを首輪に内蔵された機器で読み取りコンピュータで管理しています。ミルクを規定量飲んでいない牛はスタッフが捕まえて足りない分を飲ませます。
子牛の内に病気を予防するワクチン接種を行います。通常赤いスプレーを吹きかけて注射を打った牛を区別したりしてます。
大きくなってお互いを傷つけない様に子牛の内に除角しておきます。適切に切らないと、角の成長が止まらず、どんどん伸びてしまう事もあります。
離乳期後半に去勢を行ないます。去勢する事で、肉質が雌牛と近くなりやわらかくなります。去勢を失敗すると、肉質が硬くなってしまったり、だいたいは性格の荒い牛に成長し、仲間の牛やスタッフを傷つけてします可能性があります。
※牛も1頭1頭性格が異なっていますので、おとなしい牛はいじめられてしまいます。
牛が過ごしやすい環境にするため、定期的に床を入れ替えます。堆肥出しはショベルで行います。淵のギリギリまでキレイにするのでテクニックが必要です。(無理すると飼槽に堆肥が入ってしまったりします。)堆肥を出し終わったら、敷料を撒きます。凸凹にならないよう均一に落としていかないとならないので繊細で難しい作業です。なるべく少ない移動でテキパキと作業しないとあっという間に時間が過ぎてしまいます。ベテランさんは1牛舎1時間以内で仕上げます。敷料はあまり頻繁に交換してしまうとコストが高くなってしまうので、なるべく日持ちさせるよう毎日状態をチェックします。床の状態が悪いままだと、病気につながったり、転倒死の危険もあるので見極めが大事です。
※主な敷料としてバーク、ダスト、リサイクル堆肥、おがくずを使っています。
牧草等は通常何個も高く積み重ねて保管しているので、フォークリフト等で取るのですが崩れると危険なので、慎重さとテクニックが必要です。
肥育が終盤になりいよいよ出荷する直前に体重を測定します。この時いっしょに屠畜時に番号管理するネック(首輪)をつけます。この首輪がつけられると、数日後の屠畜が確定してしまいます。ちょっとかわいそうです。
冬時期は体毛に堆肥(ぼろ)が張り付き体が汚くなります。屠畜前に体をキレイにしておかなければ、ペナルティーがありますので。ネックをかけるときにぼろをとります。これがなかなか取れず大変です。ノゴギリやバリカンを使用していますが。注意しないと腕や顔を蹴られたり、鉄柵に挟められたりする危険があります。
いよいよ屠畜場に出発するため家畜車にのせます。瑕疵ができる危険があるため、このときはあまり興奮させない様にしなければなりません。
牛は1頭が動くとあとに続いて次々に動く習性がありますので、うまく誘導してなるべく静かに家畜車にのせます。
トヨニシファームでは専用の施設で堆肥を数カ月かけ撹拌、乾燥させて、良質なリサイクル堆肥を作り、敷料として再利用しています。また自社及び近隣の農家さんの畑に撒いたり、管内の業者さんに販売を行なったりしております。
牛舎の前の通路が除雪されていないとミキサー車(エサをあげる車)が通行できません。エサは毎日決まった時刻に与えるのが良いので、大雪の時は、早朝からの除雪が必要です。
麦稈(小麦収穫後のわら)を回収して1年間のエサとして保管します。十勝では小麦の収穫は地域共同で行うのが通常です。1軒1軒の畑の面積も広く、天候の状況や実り具合に左右されるためなかなか予定通りにいかない事が多く、心労が絶えません。どうにか刈り終わった後の麦稈も、雨が降らないうちにロールにして回収しなければなりません。いったん雨に濡れてしまうと大変です。濡れたままロールにしてしまうと冬に凍結してしまい春にカビが発生してしまいます。再度乾燥させるには天気の良い日が続くのを待たなければならず、麦稈をひっくり返すなどの作業が増えてしまいます。毎年スタッフが数日間、夜遅くまで健命に回収作業を行っています。
デントコーン収穫の後、茎を回収して小間切れにしたものを、エサとして長期保存するために発酵させます。ラップで包んで発酵させる方法と、スタックサイロ、バンカーサイロをつくり発酵させる方法があります。サイレージは傷みやすいので、刈ったその日に素早く作業して空気を遮断しておかなければなりません。これも大変な作業でスタックサイロ、バンカーサイロを作るため、スタッフが夜遅くまで作業しています。